要望書・見解等

2017年度


標題 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」の審議経過に関する見解
日付 2017年4月17日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 本年2月28日に閣議決定され、現在、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)が国会で審議されています。この一連の経過に鑑み、現段階での本協会の見解を下記の通り表明します。

1.法改正の趣旨及び措置入院制度の見直しについて

 本協会は、かねてより、精神保健福祉法における措置入院制度の見直しについて、相模原市の障害者支援施設における事件と切り離して協議検討するよう要望してきました。この度、政府が審議過程において、改正法案概要の「改正の趣旨」から相模原事件の再発防止を法改正の目的であると誤解させるような表現を削除したことにつき、遅すぎた感は否めないものの本協会としては肯定的に受け止めています。報道過程を通じて形成される歪んだ社会的認知のままに、法改正に至った過去の過ちを繰り返さぬよう、国会審議中にあって食い止めた姿勢は評価したいと思います。

 また、クライエントの自己決定の尊重を専門職アイデンティティとして重視する本協会の意見が汲み入れられ、個別ケース検討会議における本人の参加が明記されたことも妥当な判断と考えます。

 なお、今回の法改正に関しては、2013年改正時における3年後の検討規定に基づき、厚生労働省に設置された「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において、1年間に渡って協議されていました。改正法案では、2013年改正以前に指摘されていた措置入院制度における保健所の機能強化をはじめとして、措置指定病院における医療と支援の質の向上、指定医制度の見直しが盛り込まれました。長年未着手であった強制入院制度としての措置入院制度の見直しは、本協会がこれまで要望してきたことでもあります。

 今後、政府はこれらの改正事項の運用における措置入院の実態把握と評価を行い、権利擁護機能の強化を含めさらなる改正を行うことが望まれます。


2.非自発的入院のあり方に関する継続的な検討について

 非自発的入院に対する権利擁護機能の体制が構築されていない現段階において、医療保護入院制度の存続や市町村長同意の要件緩和は、歴史的課題の積み残しとして改正法案が抱える重大な課題であると考えます。

 本協会は、これまでにも意思決定支援の仕組みや非自発的入院における行政責任の明確化を求めてきました。今回の法案ではこうした点に関する改正提案が為されなかったことから、改めて厚生労働省に検討会を設置し、3年以内の見直しに向けて協議を継続することが妥当であると考えます。その際、2016年度より実施されている精神医療審査会の機能強化の実態についても、その成果と妥当性を評価することが求められます。

 こうした見直しの必要性に関する認識が有名無実化しないよう、今国会における法案の採決にあたり、附帯決議を付すことが適当であると考えます。


3.精神保健福祉法の意義の再検討について

 精神障害のある人々の地域生活支援は、地域包括ケアシステムの中で一体的に行われることが望ましいと考えます。障害福祉に関する事項は既に障害者総合支援法に一元化されており、精神保健福祉法の「福祉」に関する再整理が必要です。

 政府が、相模原事件の再発防止を法改正の趣旨から削除したことは、精神病者監護法から精神衛生法の改正等々と連綿と続く、社会防衛策としてのこの法の成り立ちそのものを見直す覚悟の表れであると認識し、精神科医療をその他の医療から切り離して規定する現行の精神保健福祉法の抜本的見直しの端緒に立つことを示すものと考えます。

 非自発的入院制度の存置の是非についてさらなる検討を重ね、国際連合の「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」や「障害者の権利に関する条約」に適った入院制度の創設へと歩を止めることがないよう求めるとともに、本協会も諸活動を展開します。


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